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エンジニアこそ、ビジネスに強くなれ!
技術は“手段”。価値は“届け方”で決まる。――だからこそ、エンジニアにビジネス視点。
この文章は、初心者にもわかる丁寧さを大切にしつつ、段階的に深められるように初級/中級/マネジメントの三部構成にしました。読みながら手を動かせるチェックリスト・会話テンプレ・ミニワークも用意しています。肩の力を抜いて、ゆっくり進めてください。
Part 1|初級編:「なぜ作るの?」から始めるビジネス視点
1-1. 技術とビジネスの関係――まずは“地図”を持つ
- 技術(How) … どう作るか。プログラミング、設計、テスト。
- ビジネス(Why/What) … なぜ作るか/何を実現したいか。ユーザー、売上、コスト、価値。
ポイント:コードは価値を届ける“道具”。**目的(Why)→方法(How)**の順で考えると、迷子になりにくい。
ミニ事例
- チケット予約サイトの「検索速度向上」:
- 技術だけ: インデックス最適化で高速化。
- ビジネス視点: 直近の繁忙期に検索離脱を減らし、予約完了率を2%上げるための高速化。ピーク時間帯のユーザー体験を守るのが目的。
1-2. コミュニケーションが“伝わる”に変わる
エンジニアは専門用語で説明しがち。でも相手は成果・リスク・費用対効果で理解します。
言い換えテンプレ
- ×「Redisでキャッシュします」
- ○「ピーク時の応答を0.8秒→0.3秒に短縮できます。離脱率の低下が見込めます」
コツ:数字・比較・期限の3点セットで伝えると、合意形成が早い。
1-3. 初心者がまず覚えるべき“最少ビジネス語彙”
- KPI:重要指標。例)CVR、DAU、解約率。
- ROI:投資利益率。かけたコストに対し、どれだけ戻るか。
- CAC/LTV:獲得コスト/生涯価値。継続課金サービスで超重要。
- ユースケース:ユーザーがどう使うかの具体例。
覚え方:自分のプロダクトで1つずつ実データに当てはめる。言葉は体験で定着します。
1-4. 初級者の3ステップ学習プラン(1〜2週間)
- 用語メモ:自分の案件で出るビジネス用語を20語、1行説明でまとめる。
- 目的の言語化:担当タスクの「誰のどんな課題を解くか」を2文で書く。
- 成果の見立て:そのタスクで改善したい数字を“仮”でいいので決める(例:操作エラー率-20%)。
チェックリスト
- その機能のユーザー像を1人、顔が浮かぶレベルで言える
- “今”取りたい成果のKPIが1つに絞れている
- そのKPIに効く根拠(仮説)を1つ示せる
1-5. 会話テンプレ(要件確認の最短形)
僕「この機能のゴールは何でしょう?」
相手「オンボーディングの離脱を下げたいです」
僕「対象ユーザーは誰で、今いくつの離脱率を**いつまでに何%**にしたいですか?」
相手「新規のスマホユーザーで、今40%→来月末までに30%を目標に」
僕「OKです。じゃあ入力ステップ短縮案とガイド表示案の2択で見積もり出します。影響見込みは**CVR+3〜5%**です」
1-6. つまずきがちな落とし穴
- 「作ることが目的化」:完成=価値ではない。使われて初めて価値。
- 「専門用語での説明」:相手は意思決定できない。数字で語る。
- 「ユーザー不在」:まず誰の何が変わるか。
Part 2|中級編:技術×データで“価値を設計”する
2-1. 役割のシフト:タスク実行者→橋渡し役
中級になるほど、要求を翻訳し、現実的な解を設計する力が要ります。ここで効くのが「データで語る」姿勢。
例:新機能の是非
- 主張:「パーソナライズを入れるべき」
- 根拠:「ABテストでクリック率+12%。サーバーコストは月3万円増、追加売上で十分回収」
2-2. 技術的負債とスピードのバランス
- 短期:リリースを優先し仮対応
- 中長期:負債返済のスプリントを計画
意思決定フォーマット(簡易)
- 影響範囲:どの機能/KPIに影響?
- 期間:いつまでに返済?
- コスト:開発・運用の増減は?
- リスク:放置時の最悪は?
判断軸:**“将来の1週間を今、取り戻す”**返済ならGo。
2-3. ユーザー価値の解像度を上げる
- 定性:ユーザーインタビュー、ヒートマップ、録画セッション。
- 定量:CVR、滞在時間、NPS、解約理由のタグ付け。
UX→KPIの結びつけ例
- 「入力エラー文を具体化」→途中離脱 -8%
- 「検索の曖昧一致対応」→検索成功率 +15%
2-4. クロスファンクショナル体験の取り方
- 週1回、CS(顧客サポート)同席:本当の痛みが分かる。
- 月1回、営業同行:導入障壁と意思決定プロセスが分かる。
- スプリントごとにマーケとレビュー:メッセージと機能を揃える。
2-5. 失敗から学ぶ(実録)
やりがち:完璧主義でリリース遅延 → 競合に先行され機会損失。
学び:80点で早く出し学習速度を上げる。カナリアリリース/ABテストで安全に検証。
2-6. 中級者の成長ルーチン(毎週30分)
- 先週のKPI変動を1つ説明できる
- 来週の実験仮説を1つ持っている
- 他部門の“いまの関心事”を1つ言える
Part 3|マネジメント編:チームに“事業感度”を根づかせる
3-1. まず“共通言語”を作る
**レビュー用シート(1枚)**を用意して、全タスクをこの言葉で語る:
- 目的KPI/期日
- 対象ユーザー/主要ユースケース
- 成果の測り方(計測設計)
- リスクと打ち手(ロールバック案)
効能:議論が設計思想から事業価値へ自然にシフト。
3-2. 定例を“ビジネス×技術”の対話に変える
- Demo→Impact:デモの後に数値インパクト予想を必ず言う。
- Win共有:成功要因を言語化し、再現可能な知にする。
アジェンダ例(30分)
- 今週のKPI(5分)
- ユーザーの声・CS案件(10分)
- 来週の実験計画(10分)
- リスク・ブロッカー共有(5分)
3-3. ビジネス側との“接面”を増やす設計
- エンジニアを顧客会議/マーケ会議へローテーション参加。
- 仕様策定は三者(Biz/PM/Dev)同席で最初の30分だけでも顔合わせ。
メール雛形(招待用)
件名:次回ミーティングに開発担当を同席させたい件
要旨:実装の現実性と価値仮説の精度を上げるため、開発から1名参加させたいです。目的は要件の言語合わせと早期リスク洗い出しです。
3-4. 技術的負債を“投資判断”で説明する
- 「きれいにしたいから」ではなく、**“未来のコスト回避額”**で語る。
- ダッシュボードに返済残高と返済効果(速度、障害減)を表示。
3-5. 1on1でキャリアとビジネスを結びつける
- 問い:「あなたの今の強みで、事業KPIに最短で効くのはどこ?」
- 成長課題:「来月、誰の意思決定を変えられるデータを出す?」
- 機会設計:営業同席、PM代行、テックブログ執筆をローテーション。
3-6. 衝突を“創造的”に解く(実例)
ある案件で、ビジネスは「早期リリース」、開発は「品質担保」を主張。同じテーブルで“ユーザーにとっての最悪”を先に共有。結果、フェーズ分割+カナリアで合意し、KPIも障害件数も目標内。対立の根は“言語の違い”。目的の再定義が突破口でした。
付録A|実務テンプレート集
A-1. 価値提案メモ(1分フォーマット)
- 誰に:
- 何の課題を:
- どう解決して:
- どのKPIが:いつまでに:どれくらい:
- リスクと軽減策:
A-2. 技術的負債 返済カード
- 対象モジュール:
- 痛み(具体例/頻度):
- 返済コスト(人日):
- 返済効果(速度/障害/採用容易性):
- 推奨タイミング:
A-3. 計測設計チェック
- 目的KPIと代理指標が定義されている
- 計測イベントが実装・検証済み
- ABテストの分割・期間が妥当
- ロールバック手順が用意済み
付録B|おすすめ学びリスト(初級→中級)
- 書籍:『イシューからはじめよ』『メトリクスによるプロダクトマネジメント』『Lean Analytics』
- 無料リソース:Google Analytics 4 基礎、ABテスト入門(各社ブログ)
- 体験:CS/営業の現場同席、ユーザーインタビュー見学
最後に(やさしいまとめ)
- 初級:まず「誰の・どんな課題」を言葉にして、1つのKPIと結びつけよう。
- 中級:仮説→実験→学習のループを数字で回そう。
- マネジメント:チームの“言語”を揃え、価値を生む仕組みにしよう。
焦らなくて大丈夫。一歩ずつで、ちゃんと強くなれます。あなたのコードが、**誰かの“うれしい”**に変わる。そこにビジネス視点のぜんぶがあります。


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